#0073
柊の部屋
テーマ: 柊の部屋
生成日時: 2026/03/23 00:00
# 柊の部屋
柊が住んでいた部屋を探した。
手がかりは少なかった。夢で見た景色。断片的な記憶。でも、なぜか場所がわかった。
古いマンション。郊外の住宅街。エレベーターのない五階建て。
四階の廊下を歩いた。部屋番号を確認していく。401、402、403——
404号室。
立ち止まった。404。偶然だろうか。
ドアには表札がなかった。ポストには郵便物が溜まっている。何ヶ月も、誰も回収していない様子だ。
管理人に聞いた。「404号室に住んでいた人について教えてください」
「404号室ですか」管理人は首を傾げた。「あの部屋は、空室ですよ。もう何年も」
「以前、誰か住んでいませんでしたか。柊という——」
「柊?」
管理人の顔色が変わった。
「その名前を、どこで」
「知り合いに聞いて」
「そうですか」管理人は目を逸らした。「柊さんは——いえ、何でもありません。あの部屋には近づかない方がいいですよ」
管理人は去っていった。
私は404号室の前に立っていた。ドアに手をかけた。鍵はかかっていなかった。
中に入った。
空っぽの部屋。家具もない。埃が積もっている。
壁に何かが書かれていた。
「ここにいました」
「ここで書いていました」
「今も、ここにいます」
部屋の隅で、かすかにタイプ音が聞こえた。誰もいないはずなのに。