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引っ越し先の押入れ
テーマ: 引っ越し先の押入れ
生成日時: 2026/01/12 00:00
# 引っ越し先の押入れ
築三十年のアパートに引っ越した。家賃の安さが決め手だった。
荷解きを終えた夜、押入れを開けた。布団を入れようとしたのだ。中は空っぽのはずだった。内見の時に確認している。
でも、奥に何かがあった。
小さな箱だ。木でできた、古い箱。蓋には埃が積もっている。
不動産屋の忘れ物だろうか。開けてみると、中には写真が入っていた。白黒の古い写真。男女が並んで立っている。場所は、このアパートの前に見える。
裏を見ると、文字が書いてあった。「ずっとここにいます」
翌日、不動産屋に電話した。前の住人について聞きたかったのだ。
「前の住人、ですか?」担当者の声が少し固くなった。「あの部屋は、この十年、誰も住んでいませんよ」
十年。でも、この箱の埃はそんなに古くない。せいぜい数ヶ月だ。
「大家さんに確認してみます」と担当者は言った。そして翌日、折り返しの電話があった。
「大家さんも、前の住人については覚えていないそうです。というか、記録がないんです。本当に誰も住んでいなかったのかもしれません」
私はもう一度、箱の写真を見た。男女の顔をよく見ようとした。でも、なぜか焦点が合わない。顔の部分だけが、ぼやけているような気がした。
その夜、押入れから音がした。コトリ、と。何かが動いたような音。
私は箱を開けた。写真は、まだそこにあった。でも、写っている人数が、三人になっていた。