#0027
実家の仏壇
テーマ: 実家の仏壇
生成日時: 2026/02/05 00:00
# 実家の仏壇
盆に実家に帰った。仏壇に線香を上げるのが、毎年の習慣だ。
仏壇には、祖父の遺影が飾られている。三年前に亡くなった。穏やかな笑顔の写真。
線香を上げ、手を合わせた。目を開けた時、違和感を覚えた。
遺影の表情が、違う気がした。
笑顔ではなかった。真顔だ。口元が、への字に曲がっている。
見間違いだろう。古い写真だ。照明の加減で、そう見えただけだ。
夕食の後、また仏壇に行った。遺影を見た。
怒っている顔だった。
眉間に皺が寄り、目が細くなっている。明らかに、さっきとは違う表情。
母に聞いた。「おじいちゃんの写真、変えた?」
「変えてないよ。ずっと同じ写真」
「表情が違う気がする」
「気のせいでしょ。同じ写真だよ」
その夜、寝る前にもう一度見に行った。
遺影の祖父は、泣いていた。
目元が赤く、頬に涙の筋が見える。口は開いていて、何かを言おうとしているように見えた。
「おじいちゃん……」
遺影に触れようとした。その時、仏壇の蝋燭が消えた。
暗闇の中で、声が聞こえた。祖父の声だ。
「帰れ」
翌朝、遺影は元の穏やかな笑顔に戻っていた。
私はその日のうちに、実家を出た。帰り際、仏壇を見た。遺影の祖父は、笑っていた。でも、その笑顔が、どこか悲しそうに見えた。