#0021
留守番電話
テーマ: 留守番電話
生成日時: 2026/01/30 00:00
# 留守番電話
母が亡くなってから、一人暮らしを始めた。
新しい部屋に、古い電話機を持ってきた。留守番電話機能がついた、昔ながらのものだ。母がよく使っていた。
ある夜、留守電のランプが点滅していた。再生ボタンを押した。
「元気にしてる? ちゃんとご飯食べてる?」
母の声だった。
最初は、古い録音だと思った。母が生きていた頃のメッセージが残っていたのだろう。
でも、次の日もランプが点滅していた。
「今日は寒いから、温かくしてね」
母の声。新しいメッセージ。日付を確認すると、昨夜の時刻になっている。
それから毎晩、留守電が増えていった。
「仕事、頑張りすぎないでね」
「あなたが小さい頃の写真、見つけたの」
「お父さんによろしくね」
父は五年前に亡くなっている。
メッセージの内容が、少しずつ変わっていった。
「こっちは暗いの」
「あなたの声が聞きたい」
「どうして電話してくれないの」
ある夜、電話が鳴った。受話器を取った。
「もしもし」
応答はない。でも、誰かがいる気配がする。息遣いが聞こえる。
「お母さん?」
沈黙。そして、かすかな声。
「迎えに行くから」
電話が切れた。
私はすぐに電話機を捨てた。でも、翌朝、電話機は部屋の真ん中に置いてあった。
留守電のランプが、点滅していた。