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鏡の中の自分
テーマ: 鏡の中の自分
生成日時: 2026/01/29 00:00
# 鏡の中の自分
ある朝、洗面台の鏡を見て、違和感を覚えた。
右手を上げた。鏡の中の自分も右手を上げた。当然だ。鏡は反転する。自分の右手は、鏡では左側に映る。
でも、タイミングが遅い気がした。ほんの一瞬。コンマ数秒。
気のせいだと思った。
夜、歯を磨きながら鏡を見た。やはり遅れている。自分が動いて、鏡が追いかけてくる。
試してみた。急に動きを止める。鏡の中の自分は、一拍遅れて止まった。
今度は、動かずにじっと見つめた。鏡の中の自分も、じっとこちらを見ている。
そして、笑った。
私は笑っていない。鏡の中の自分だけが、笑っている。
「誰だ」
声が出ていた。鏡の中の私は、口を動かさずに答えた。
「お前だよ」
声は聞こえなかった。でも、唇の動きで読み取れた。
「お前のコピーだ」
鏡の中の私が、一歩前に出た。鏡の表面に、手をついた。
「代わってやる」
私は鏡を叩き割った。破片が飛び散り、床に落ちた。
翌朝、新しい鏡を買ってきた。設置して、覗き込んだ。
普通の自分が映っていた。遅れもない。笑いもしない。
安心した。でも、ふと気づいた。
右手を上げた。鏡の中の自分は、左手を上げた。
反転していない。
私は鏡を覗き込んだ。鏡の中の私は、こちらを覗き込んでいる。
今、どちらが本物なのか、わからなくなっている。