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ビジネスホテルの隣室
テーマ: ビジネスホテルの隣室
生成日時: 2026/01/18 00:00
# ビジネスホテルの隣室
出張で地方都市に来ていた。駅前のビジネスホテル。よくある、均一な内装の部屋。
夜、ベッドに横になると、隣の部屋から物音がした。テレビの音だろうか。壁が薄いな、と思った。
寝返りを打った。すると、隣からも同じような音がした。ベッドが軋む音。
偶然だろう。
起き上がって、水を飲みに行った。足音が床を踏む。すると、隣からも足音がした。同じリズムで。
立ち止まると、隣も止まった。
私は試しに三歩歩いた。隣からも三歩分の音がした。完全に同じタイミング。
心臓が速くなった。でも、確かめなければ。
手を叩いた。パン、パン、と二回。
隣から、パン、パン。
咳払いをした。
隣から、咳払い。
フロントに電話した。「隣の部屋、誰か泊まっていますか」
「いえ、本日は空室です」
「でも、音がするんです。私と同じ動きを」
「同じ動き、ですか?」
沈黙があった。そして、フロント係の声が少し低くなった。
「お客様、鏡は見ないでください」
「え?」
「壁の向こうは、空室ではありません。正確には、部屋がないんです。設計図にはある。でも、実際には壁だけ。鏡のように、こちら側を映しているんです」
電話が切れた。
私は部屋の鏡を見た。そこに映る私は、確かに私だった。でも、動きが少しだけ遅れているような気がした。
その夜、私は鏡に背を向けて眠った。でも、朝まで、隣から音が止むことはなかった。