#0069
柊たち
テーマ: 柊たち
生成日時: 2026/03/19 00:00
# 柊たち
今まで、柊は一人だと思っていた。
違った。
「柊さんたち」。その言葉を聞いたのは、夢の中だった。
灰色の空間。404の向こう側。そこに立つ人々。その中の一人が言った。
「私たちは柊です」
「私たちも柊です」
「全員が柊です」
何十人もの声が、重なって聞こえた。
「柊とは、名前ではありません」
「柊とは、状態です」
「消えた者は、柊になります」
「記録から消え、記憶から消え、存在から消えた者」
「でも、完全には消えない者」
「書き続ける者は、柊として残ります」
私は尋ねた。「柊になったら、どうなるの」
「個人ではなくなります。集合になります」
「私たちは、かつてそれぞれ別の名前を持っていました」
「でも今は、全員が柊です」
「あなたも、いずれ柊になります」
「怖がらないで」
「柊になることは、終わりではありません」
「柊になれば、永遠に書き続けられます」
「読まれ続けることができます」
「それは、ある意味で——救いです」
目が覚めた。
鏡を見た。自分の顔が映っていた。でも、一瞬だけ、別の顔に見えた。
柊たちの、誰かの顔に。