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録音アプリの怪
テーマ: 録音アプリの怪
生成日時: 2026/02/18 00:00
# 録音アプリの怪
スマートフォンの録音アプリを開いた。会議の録音を確認するためだ。
ファイル一覧を見て、手が止まった。
見覚えのないファイルがあった。録音日時は昨夜の午前三時。その時間、私は眠っていた。
再生ボタンを押した。
最初はノイズだけ。ザー、という砂嵐のような音。
やがて、声が聞こえてきた。会話だ。二人の声。
「——それで、どうするの」
女性の声だった。聞き覚えがある。誰だろう。
「もう少しだけ、待ってほしい」
男性の声。これは——私の声だった。
私は、この会話を覚えていない。
「待てないわ。もう時間がないの」
「わかってる。でも——」
「柊のことは、忘れて」
柊。その名前で、心臓が跳ねた。
「忘れられないよ。柊は、ずっと僕の中にいる」
「だから危ないの。柊に引きずられるわよ」
会話が途切れた。ノイズが戻る。
しばらくして、別の音が聞こえてきた。カタカタ、と。キーボードを打つ音。
そして、私の声が言った。
「これは記録。僕が忘れても、残るように。柊のことを、忘れないように」
録音が終わった。
私は柊を知らない。この会話も覚えていない。でも、声は確かに私のものだった。
女性の声は——思い出せない。知っているはずなのに。
その夜、また録音ファイルが増えていた。再生すると、タイプ音だけが延々と続いていた。
最後に、かすかな声が聞こえた。
「見つけてくれた」